文章表現

<文章表現>舞城王太郎の『パッキャラ魔道』より

< 文章表現>舞城王太郎の『パッキャラ魔道』より
[2019年8月1日更新]

パッキャラ魔道
作者:舞城王太郎
出版日等 2004年
カテゴリ 現代もの&家族もの?

 出だしの勢いだけは一級品の舞城王太郎。
 なかでも本作『パッキャラ魔道』は、出だしの勢いと情景の迫力が抜群の、舞城王太郎らしさが凝縮された作品です。
 一文が非常識に長く、けれども口語体でリズムよく書き連ねているので、すらすら読み進めることができる不思議。

 八月二十日は日曜日で僕らは渋滞を避けるために朝の五時に起きてワゴンに乗り込んで甲州街道から中央道に乗って千葉へと向かおうと調布のインターをくぐって五分、六時十五分、高井戸の手前にやってきた僕たち四人(五人)の二十メートル前で、僕らのスバル・ドミンゴと同じく気分良さそうにすいすい走ってた白いカローラが何気なくくるっと一回転してからひっくり返った。後部座席からフトントガラスの向こうのまだ遠くの新宿高層ビル街を眺めていた僕も何してたんだか知らない直規もハンドルを握る父親も助手席の母も「あ」とひとこと言ってから、その意味不明の曲芸を始めたカローラが縦にぐるぐる大回転を始めて、でも鼻とおしりのバンパーを軽く地面にこするだけでほとんど宙に浮きながらぐるぐる、スピードを落とさずにまっすぐそのまま新宿方向に走っているのが優雅で静かなものだから、僕ら四人はなんとなく派手な運転はじめた奴がいるなあって気分で鑑賞してしまった。

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<文章表現>S. Richardsonの『パミラ』より

[2019年5月21日更新]

パミラ~或いは貞淑の報い~(原題:Pamera)
訳者:原田 範行
原作者:S. Richardson
出版日等 2011年12月20日(原作:1740年))
カテゴリ 中世貴族のセクハラ譚?

 手紙を書くのをサボっていたわけではなく、彼が、じわじわと実に卑劣なやり方でその悪だくみを明らかにしていった様子をたびたび記していたのですが、誰かが私の手紙を盗んでしまい、行方不明なのです。

 私はもがき、震え、恐怖のあまり体から力が抜けて倒れてしまったの。気絶したわけではないのだけれど、ボーっとしてしまってね。すると彼は、気絶した私を抱いて、二度三度キスしたの、まるで私を食べてしまいそうな勢いでね――。それからやっとね、彼から抜け出し、あずやまを逃げ出そうとしたのだけれど、あの人は私をつかまえて引き戻し、扉を閉めてしまったのよ。

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<文章表現>森見登美彦の『四畳半神話大系』より

[2019年5月16日更新]

四畳半神話大系
作者:森見登美彦
出版日等 2005年1月5日
カテゴリ 大学青春コメディ

 大学三回生の春までの二年間、実益のあることなど何一つしていないことを断言しておこう。異性との健全な交際、学問への精進、肉体の鍛錬など、社会的有為の人材となるための布石の数々をことごとくはずし、異性からの孤立、学問の放棄、肉体の衰弱化などの打たんでも良い布石を狙い澄まして打ちまくってきたのは、なにゆえであるか。
 責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。

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<文章表現>夏目漱石の『三四郎』予告 より

[2019年4月2日更新]

『三四郎』予告
作者:夏目漱石
出版日等 1908(明治41年)
カテゴリ 小説の予告

 田舎の高等学校を卒業して東京の大学に這入つた三四郎が新しい空気に触れる、【中略】あとは人間が勝手に泳いで、自ら波瀾が出来るだらうと思ふ、さうかうしてゐるうちに読者も作者も此空気にかぶれて是等の人間を知る様になる事と信ずる

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<文章表現>池田蕉園の「ああしんど」より

[2019年3月31日更新]

「ああしんど」
作者:池田蕉園
出版日等 1911(明治44)
カテゴリ 言葉遣い

 よっぽど古いお話なんで御座いますよ。私の祖父の子供の時分に居りました、「三」という猫なんで御座います。三毛だったんで御座いますって。

(中略)
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