<文章表現>S. Richardsonの『パミラ』より

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[2019年5月21日更新]


パミラ~或いは貞淑の報い~(原題:Pamera)
訳者:原田 範行
原作者:S. Richardson
出版日等 2011年12月20日(原作:1740年))
カテゴリ 中世貴族のセクハラ譚?

 手紙を書くのをサボっていたわけではなく、彼が、じわじわと実に卑劣なやり方でその悪だくみを明らかにしていった様子をたびたび記していたのですが、誰かが私の手紙を盗んでしまい、行方不明なのです。

 私はもがき、震え、恐怖のあまり体から力が抜けて倒れてしまったの。気絶したわけではないのだけれど、ボーっとしてしまってね。すると彼は、気絶した私を抱いて、二度三度キスしたの、まるで私を食べてしまいそうな勢いでね――。それからやっとね、彼から抜け出し、あずやまを逃げ出そうとしたのだけれど、あの人は私をつかまえて引き戻し、扉を閉めてしまったのよ。

「この小娘め! 誰に向かって口をきいているのかわかっているのか!」
「あなたがご主人様であることをお忘れのときに、私が召使であることを忘れても不思議ではありません」

「おバカさんだね、僕が何か悪いことをしたというのかい」
「そうですとも、ご主人様、この世で最も悪いことですわ。あなたのせいで、私は我を忘れ、分というものを忘れてしまいました。運命によって定められたあなたと私との間の距離を縮めておしまいになったのです、ご自身が品位を落とし、こんな貧しい召使になれなれしくなさったからです」
「小娘め! めそめそするな! 確かに僕は下品なまねをした。だがそれはお前を試そうとしただけのことさ」

 私はひざまずいて言いました。
「どうかお願いです、ご主人様、操とほまれを守ることだけを務めと考えるこの哀れで痛ましい娘にご慈悲をお与えください! それ以外に信じるがものがないのですから。そして確かにこの世では貧乏でひとりぼっちですが、道に外れぬように生きることは命ににも増して大切なことだといつも教えられてきたのです」

(本文より一部抜粋)

ひとこと

18世紀の中世ヨーロッパが舞台。
貴族の若旦那が、美少女メイドのPameraに粉かける話です。

小説の文章としては、あまり巧みな文章ではありません(原文がすごぶる難しいので仕方ないと思います)。
ですが、時代がかった言葉回しや、当時の西洋社会の価値観(女性の最上の美徳は「貞淑」である)を学ぶことができる、貴重な一冊です。

Pameraが両親に宛てた手紙、という体裁で綴られた小説です。
ナボコフのロリータも日記形式ですし、昔はこういう体裁の小説が多かったのでしょうか。

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